SCJ Conference 2018 開催レポート〜A会場〜「たかがスポーツ、されどスポーツ」

最終更新: 2018年6月26日



「スポーツが苦手」と語る新生氏と、アスリートの発掘・育成・キャリア支援のシステム構築を目指している神武氏。スポーツコーチングJapan理事である小林氏を加え、二人の独自の視点からスポーツを通じて得られる学びや経験を最大化するための方策を議論した。


プロフィール

・神武 直彦氏(慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科 准教授)

1998年慶應義塾大学大学院理工学研究科計算機科学専攻修士課程修了。2005年同大学院政策・メディア研究科博士課程修了。博士(政策・メディア)。宇宙開発事業団開発員、宇宙航空研究開発機構主任開発員、欧州宇宙機関研究員を経て、2009年より慶應義塾大学准教授。アジア工科大学訪問准教授。米国PMI PMPおよびiNTACS ISO/IEC 15504 Assessor








・新生 剛士氏(「QB道場」 道場長、「声トレ塾」代表)

関西大学大卒。リクルート・シーガルズ(現オービック・シーガルズ)、アサヒ飲料チャレンジャーズのQBとして日本社会人Xリーグで11シーズンプレー。米アリーナフットボール・リーグでの試合出場経験も持つ。オービックでQBコーチ、オフェンスコーディネーターを歴任し、2011年に「QB道場」を立ち上げ、日本全国だけでなく海外でも、数多くのQBを指導している。








――よい指導者との出会いで成長角度が変わる


新生:もともと中学・高校と野球の選手だったのですが、補欠の時代が続き野球に関してはコンプレックスがあったのです。当時、関西では京都大学アメフト部が強くなっていた時期で、ある意味、素人でも大学からアメフトを始めても活躍できるかもしれないという流れもあり、その流れに乗る形で、関西大学入学と同時にアメフト始めました。


当時、タイミングよくアメリカからプロ指導者がやってきて、教えられるがまま練習を繰り返していたら、野球では遠投が苦手だったのに、アメフトではボールが投げられるようになった。要するに「成長実感」ですね。


それに快感を覚えてどんどん練習にのめり込んでいると、そのうち経験者を差し置いて試合でプレイするようにまでになったのです。社会人アメフトチーム時代も同様、そこでもめちゃくちゃ良いコーチと出会い、コーチの指導のもと、1部リーグに昇格したばかりチームが優勝するという、心に刻まれるいい経験ができました。



社会人チームを卒業しQBコーチをしていたが、トップチームのコーチではなく自分の殻をやぶりたい、頑張り方のコツを伝えることこそ自分ができることと思い、プロコーチとしてQB道場を立ち上げたのです。


QB道場へ通う選手には、選手として、リーダーとして、結果を出すにはコミュニケーションが大事で、人に伝え協力を得ることがとても重要になると教えています。それはつまり、スポーツ選手としてだけでなく、ビジネスパーソンとしてもいろんな人を巻き込んで成長し続けてほしい、そういう選手をQB道場から輩出したいと強く思い、日々邁進しています。



――俯瞰と多視点が重要


神武:私の得意技は宇宙開発でして、今は大学教員もやっています。大学教員は極めてコーチングの要素が強いですね。学生自身の成長のために機会を提供し、本人に何を考えてもらうかを日々試行錯誤しています。並行してトップアスリートの育成やオリンピック・パラリンピックの全競技に関する戦略立案、タレント発掘・育成・キャリア開発などの一連に関するシステムの構築も請け負っています。


具体的には、例えばオリンピック選手が引退後、競技団体の理事に就くケースが多いのでしが、これまでの経験からシステマチックに考えることに慣れていないため、その点に関してサポートをしています。



私が教員をしています慶應義塾大学SDM(システムデザイン・マネジメント研究科)では、その名の通りシステム思考・デザイン思考・マネジメントをスコープとしているのですが、簡単に言うと部分最適を考えるとチームとし良くないことが起きやすいという考えから、俯瞰と多視点を見出すことの重要性を研究しています。実はこのことはスポーツに非常に親和性があるのです。


俯瞰と多視点を具体的に行うためには、スポーツに関する様々なデータを活用することが有効です。研究の一環でスポーツ選手のユニフォームのGPSの機能見直しとコストカットに取り組んだのですが、コストカットは驚くほどの削減が実現でき、データは多種多様なデータを取得することができるようになりました。


グラウンドを大きく使うことを意識した練習メニューも、実際には使い切っていないスペースが多くある、などが見えるようになったのです。データの活用により、練習後に自分のイメージと実際の動きのギャップを確認するなど、俯瞰と多視点でのアプローチが実現できます。これがコーチングに非常に有効です。


これは一例ですが、他にもタレント発掘やいいコーチが見つからないという課題解決をサポートする仕組みも作りたいですね。



――プッシュ/プル教育


モデレーターの小林氏から「コーチとして、選手・学生自身に気づきを促すようなきっかけをどのように作っているか」と会場にいる参加者へ投げかけがあり、会場内では積極的なディスカッションが行われました。


参加者の一人から「知識を与えるようなプッシュの教育と生徒自らの考え引き出すプルの教育を意識している。プルの教育をすることによって学生に気づきを与えられるよう試みているが、どう考えますか?」という質問があり会場が沸きました。


神武:プッシュとプルまさにその通りだと思います。私自身の恩師からも教育は我慢でありプッシュばかりではいけない、と言われているのです。ですが最初からプルだけではあまりに難しいため、3つの方法でプッシュ教育を実践しています。


まず1つ目がデータを使う事。データを使うと客観性があり理解が非常に早くなります。


次に立場を変える。例えば日本ではそれほどのスキル・技術ではない学生をカンボジアへ連れていく。カンボジアにその技術がない場合、この学生はヒーローになれます。モチベーションが高まり技術の獲得にさらに意欲的になるわけですね。


3つ目は教える側を学ぶ側に変えることです。何かに秀でた学生が自分の得意なことを他者へ教える。まさに半学半教ですね。



新生:実際の現場では、まずは基礎固めを目的にプッシュの教育をベースにします。最初はコーチの言う通りにトレーニングすると、ある程度までは上手くなります。そして上手くなる楽しさを体感してもらう。


ある程度のベースができたら、次は面談をします。プル教育をベースに自分がどうなりたいかを描けるようにしていくのです。チームや自分のビジョンを描くことによって自分の足りないところを把握してもらいます。


加えて神武先生のお話にもありましたが、新しく入ってきた後輩を指導する経験をしてもらう。個々人のビジョンを描くことや後輩指導といった経験を通じて気づきを引き出していますね。



講演を終えて


会場では積極的な議論が巻き起こった。スポーツという共通の軸に対し、異なる切り口での成長エンジン・成長加速のための仕組み・システムについて、あえてフォーカスしすぎずに幅広くお話いただきました。新生さん、神武先生、貴重なお話をありがとうございました。



​Quick Link

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